屋上の自然あふれるレクリエーション場
自然とレジャーの融合施設
出典:Hufton&Crow
デンマークのコペンハーゲンにある巨大スロープ「コペンヒル(CopenHill)」は、頂上の高さ85メートル。高い煙突から白煙(水蒸気)が流れる下で、人工芝のスキーやボルダリング、ライブ、ハイキングなどレクリエーションが楽しめる新スポットとして市民たちに親しまれています。年間を通じて屋外活動ができ、市民たちに楽しい思い出を作ってほしいとのビジョンで作られ、2017年にオープンしました。この独特な屋上建築のコペンヒルですが、実は下の部分は最新技術を導入した「廃棄物焼却発電プラント」、つまりごみ焼却施設として運営されているのです。
ゴミ焼却だけではない、環境配慮の取組み
出典:Hufton&Crow
このごみ焼却プラント「アマガー・バッケ(Amager Bakke)」は総工費600億円以上をかけて建設されました。なんと、2020年には周辺の5つの自治体のごみ60万トンが焼却され、8万世帯分の電力と9万世帯分の熱を供給したといいます。廃棄物に含まれるエネルギーを100%利用する設計となっており、旧プラントに比べエネルギー出力は25%以上も向上しています。また「アマガー・バッケ」では、低炭素社会に向けて全力で貢献しようと年間10万トンのCO₂排出を削減している上、95%以上のNOx(窒素酸化物)を浄化し、ダイオキシン浄化機能なども備え、環境問題改善にも貢献しています。CO₂排出もほぼゼロを目指し、今夏に試験を開始したカーボンキャプチャーにより、2025年からは回収率95%(50万トン)を達成できる見込みです。また、焼却灰や金属廃棄物も再利用されています。
都市型のごみ焼却施設を目指して
出典:Press/CopenHill
この画期的な廃棄物焼却発電プラントを手掛けたのが、世界的に有名なデンマークの建築家ビヒャルケ・インゲルスです。「コペンヒル」の屋上部分には「ルーフ・ナチュラルパーク」の考え方が反映されており、北欧の自然が再現され、鳥や昆虫が実際に生息しています。自然と最新テクノロジーが融合した「都市型ごみ焼却パーク」とでも言えるでしょうか。多くの都市で、ごみ焼却施設というとイメージが悪く、住民に敬遠されがちですが、この「コペンヒル」は、様々なアイデアやイノベーションで負のイメージを払拭し、都市にエネルギーを供給するだけでなく、市民に愛される施設となっています。発電プラントがランドマークになるのは世界的にも珍しく、今まで環境に関心のなかった市民も、「コペンヒル」を訪れることで意識が変わることが期待されそうです。